羽生結弦も射程圏内に。世界2位の宇野昌磨は体力アップで伸びしろ増大 (2ページ目)

  • 折山叔美●文 text by Oriyama Toshimi 能登 直●写真 photo by Noto Sunao

 
 フリーでも当日の公式練習では4回転ジャンプがなかなか決まらず、曲かけでも4回転はすべて抜いて、曲の途中で練習を止めていた。だが、本番では4回転ループをGOE(出来栄え点)加点1.43点をもらう出来で決めると、続く4回転フリップもSPと同じ1.14点の加点を獲得。続く3回転ルッツと後半の1本目の4回転トーループでは着氷が乱れたが、それ以外はノーミスの演技で214.45点を獲得。パーフェクトな演技をした羽生に次ぐ2位になったのだ。しかも演技構成点はすべて9点台で、羽生に3.66点劣るだけの94.42点。僅かなミスはあってもそれに動揺することはまったくなく、音楽の中に入り込んで滑りきった演技を、ジャッジから高く評価された。
 
 最終組で自分の前に滑ったネイサン・チェン(アメリカ)やボーヤン・ジン(中国)、羽生、パトリック・チャン(カナダ)の演技も、「やっぱりうまい選手の演技は見たいじゃないですか」と、普通に見ていたという神経の太さ。「去年は楽しめなかったから、今年は楽しみたい」という素直な思いが、公式練習や6分間練習でなかなか決められなかった4回転に対しても「本番だから気合いが入ったというより、何となく跳べる気がしてた」という精神状態につながっていたのだろう。羽生はSP5位と出遅れ、SP1位のフェルナンデスはフリーで6位と崩れた。だが、宇野はともに2位と最も安定していたのだ。

「今回は緊張もあんまりしない中で気持ちだけはいい感じで上がっていたし、しかも楽しもうという気持ちがあったので......。いつも新しいジャンプをする時は、次の日は本当に脚にくるんですけど、その時は楽しいという気持ちでやるから、いつも以上に力が出て跳べたりすることがあるじゃないですか。昨日の試合はそんな感じでした」

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