ジャンプは美しく跳ぶ。羽生結弦の強さを支える「出来栄え点」の威力

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 4月1日に行なわれた世界選手権フリーで、羽生結弦が2015年12月のグランプリ(GP)ファイナル以来となる、世界最高得点を更新(223.20点)した。それは1シーズンぶりの満足感を彼にもたらしただけでなく、さらなる高得点の可能性を示す滑りでもあった。

世界選手権を大逆転で優勝した羽生世界選手権を大逆転で優勝した羽生 2年前にNHK杯、GPファイナルと連続して最高点を更新した時は、共にショートプログラム(SP)で完璧な演技をして勢いに乗った状態だったが、今季の世界選手権はSPで想定外のミスをして5位発進と精神的に追い込まれた状況だった。その上、プログラムも昨季の『SEIMEI』のようなハッキリして力強い曲ではなく、静かな曲調でジャンプを跳ぶタイミングをつかみにくいものだったにもかかわらず、羽生はシーズン初のノーミスの演技を披露した。

 それが歴史に残る大逆転劇につながったわけだが、演技の完成度について羽生自身は納得していない。特にジャンプの美しさに関しては、「小さい頃から着氷の後に流れるようなジャンプをすることを教えられてきたのが、自分の強みのひとつでもある」と自信を持っていて、常にGOE(出来栄え点)で満点となる「3点」の獲得を目指しているからだ。

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