大逆転の羽生、無心の宇野。
日本男子フィギュアが世界でワンツー

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao

 そんな神経戦の中で「我関せず」の演技をしたのが、フェルナンデスの前の5番滑走だった宇野昌磨だ。普通の選手ならば、優勝争いをするライバルの演技はプレッシャーになるものだが、宇野は「他の選手の演技を見ないようにしようとかではなくて、逆に見たいんです。それが自分の演技に影響するとは思わないし、うまい選手の演技は見たいと思うじゃないですか」と、平然とした顔で言う。

「他の選手たちはほぼノーミスの演技をしていたけど、自分は去年のような失敗をしないで、楽しんで滑れればいいと思っていたので影響はなかったと思います。むしろ、300点台とか290点台のすごい演技を見て、自分がどんな演技をしても絶対に勝てないという確信も生まれたので......。もう開き直って、普通に自分のことをやろうと思いました」

 無心ともいえる心構えで臨んだ宇野は、6分間練習でもジャンプのハマりはよく、「ループもフリップも跳べる気がしていた」と気持ちにゆとりがあった。それが本番でも演技に余裕を与え、3回転ルッツのステップアウトと4回転トーループのわずかな着氷の乱れはあったが、自己最高の214.45点を獲得。3月のプランタン杯に続く自身2度目の300点超えを達成し、羽生を除くと歴代最高の319.31点まで伸ばして羽生に次ぐ2位に入った。

 世界選手権での日本勢のワンツーフィニッシュは、07年女子の安藤美姫と浅田真央、14年男子の羽生結弦と町田樹に続く3度目の快挙。4回転時代に突入して技術レベルが一気に上がり、パーフェクトな演技をすること自体が難しくなっている男子の戦いに「絶対」はないが、来年の平昌五輪へ向けて期待が膨らむ結果になった。

フィギュアスケート特集号
『羽生結弦 平昌への道 ~Road to Pyeong Chang』

  


詳しくはこちらへ>>

■フィギュアスケート 記事一覧>>

■フィギュアスケート特集ページ>>

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る