羽生結弦、チェンに惜敗も大きな収穫。「4回転5本が視野に入った」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao


 その考えのとおり、最終滑走のチェンは複数のジャンプで着氷を乱しながらも、後半に4回転サルコウを入れる構成に変更するなど、4種類(ルッツ、フリップ、トーループ、サルコウ)の4回転を5回降りきる演技で204・34点を獲得。合計を307・46点にして優勝を決めた。

「フリーの得点が200点を超えて、トータルも300点を超えてうれしかったですが、結果として負けたので悔しいですね。それに4回転サルコウをショートと同じようにミスをしてしまったので、そこの練習を早くしたいというのが今の気持ちです。サルコウは『ショートでは跳べなかった』という感覚を少し持ってしまっていたので、結局それに捕らわれていたんだなというのが率直な感想です。練習ではコンスタントに4回転4本が決まるようになっていたので、それを試合で出せなかったという悔しい気持ちもありました」(羽生)

 この大会は「ジャンプに意識を集中させる大会だった」と羽生は言う。それほどチェンの4回転の確率の高さや、チェンがやや苦手にしていたトリプルアクセルを習得しつつあることに脅威を感じているのかもしれない。ただ同時に、羽生はチェンのような若手の存在が「自分の限界を引き上げてくれる大きな要因になっているのは間違いない」とも言う。

 今大会でハッキリしたことは、優勝を狙うにはSPをパーフェクトにこなすことが絶対条件ということだろう。練習では夏場からノーミスの演技を何度もしていながら、試合ではまだできていない。それを羽生は「試合での経験値の少なさが原因」という。

 今シーズンはケガの影響でアイスショーに出られず、初戦のオータムクラシックの前に、観客がいる会場でプログラムを滑る経験ができなかったという点もある。

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