指導歴50年、佐藤信夫コーチが語るスケーティング「基本中の基本」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●構成 text by Synn Yinha 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 スケートも同じです。大人は言葉と頭で解決しようとします。だから大人には「こういうことをしたら転びますよ」「スケートは体重で氷を押して進むことだから、大きな力を使わないで静かに移動すればだんだんうまく滑れるようになりますよ」という説明をします。でも子どもにはあれこれと難しいことは言いません。小さい子を教えるときには、あまり型にはめないで、ある程度安全かなと思うところまできたら、できるだけいろいろな遊びをさせるのが賢明かなと思っています。

 たとえば、1枚の画用紙に子どもがいたずら書きをします。その子が画用紙の白い部分が見えなくなるまでいたずら描きをしたら、それはすばらしいことなんです。その画用紙をアイスリンクに置き換えてみてください。氷上での遊びを通じて多種多様な動きを体で覚えさせたいわけです。夢中になって遊ぶことによって、一番自然な体重移動ができるようになるのです。

 氷上を滑っている途中、体重をグーッと右にかけたり、左に持っていったりすることによって、こっちへ行ったりあっちへ行ったりするわけじゃないですか。ありとあらゆる方向に行くことを自然と覚えていけば、何だってできる。そして慣れていきます。こう滑りたいという気持ちさえあれば、自然と答えが出てくるものなのです。だから子どもたちには「いろいろな動きをしなさい」と言います。どこまでも単純に「あそこへこういうふうに行きたいんだ」という欲を大切に持ってもらいたいです。

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