世界ジュニア王者の本田真凜。14歳の才能はどこまで伸びるか (4ページ目)

  • 野口美恵●取材・文 text by Noguchi Yoshie  能登 直●撮影 photo by Noto Sunao

 「たまたま目の前で見ていたので『どうしよう』という気持ちになりました。とにかく、自分に集中するようにしました」

 ふと、フェディチキナが棄権したことで自分が首位に立っていることを一瞬考えた。しかし、その邪念をすぐに頭から追い出す。濱田コーチから朝の練習で言われた言葉を、繰り返した。

――真凜は『勝とう』と思って勝てるタイプではない。ひとりでもファンを増やせるように滑ろうね――。

 曲は映画『ビートルジュース』のテーマ曲。いたずら好きのオバケの役で、コミカルさや妖艶さが盛り込まれたプログラムだ。しかし本田は、「曲に合わないくらい笑顔になっていました」というほど、リラックスしていた。

 気持ちをラクにして、ただひたすらスケートの時間を楽しむ。フリーもパーフェクトの演技で、総合192・98点で圧勝ともいえる勝利をつかんだ。

「優勝ということは考えませんでした。ずっと『目標は表彰台』と言ってきたのだから、2人に抜かされても(目標達成は)大丈夫だと思うようにしました」

 勝利者インタビューで、歴代の日本人優勝者が、浅田真央、安藤美姫、村上佳菜子らで、そこに続く快挙だと言われると、きょとんとする。

「目標にもしていない順位が獲れて、びっくり。歴代の優勝者がみんな、私が目標にしている選手なので、もしかして、すごいことを私はできたのかな」

 天才とは、あるとき突然覚醒するもの。本田の覚醒は、まさに今始まった。そう感じさせる14歳の春だった。


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