フリーで挽回、さらに一歩先へ。浅田真央が全日本で得た小さな手応え (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 復帰シーズンの序盤は、気持ちも乗っており、結果もしっかり出していたので、このまま順調にシーズンを戦っていくのかと思われた。だが、復帰当初から「そう簡単にはいかない」と心配していた佐藤コーチの見立てが当たってしまった。

 シーズンが進み、試合をこなすうちに、浅田の心境に変化が生じ始めたという。調子と気持ちのバランスが取れず、思い描いた通りの演技をしようとしてもできなくなっていった。「これまでと変わらず普通に取り組んでいるのに……」(浅田)、何かが違っているというわけだ。

 果たしてそれは何なのか。佐藤コーチはこう語っている。

「ここのところしばらくミスばかり続いて、本人ともども非常に悩んでおりましたけど、やっと気持ちを切り替えてきちっと滑ることができたと思います。どこか守りに入っていたものが今日のフリーで吹っ切れて、やっと、完璧ではなかったがそれなりのスケートができたので、これでちょっといい方向にいってくれるかなというのが、一番大きなことだと思います。

 ここにくるまでにいろいろな話をいっぱいしましたけど、経験しなくては分からない。なかなか理解はされなかったみたいで、今日この場でやっとそれができたということで、ここからまた一段進んでくれるかなと思います。(ここ最近の浅田については)正直、自信喪失という状態でした。『とにかくやればできるんだよ』ということを中心に、なんだかんだいろんな話をしました。本当に本人が乗り越えるのを待つ以外、何もなかった。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る