羽生結弦の全日本4連覇が示す「勝利と記録」を両立させる難しさ

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●写真 photo by Noto Sunao

「前半のふたつの4回転に関しては、GOEでマックスの加点をもらっていますし、自分の手応えとしてもよかったと思います。ただNHK杯の頃からそうですが、緊張もしていたし、連戦の疲れもあって体が動かなかったりして、しんどいところもありました。その中でも、自分なりに『こういう場合はこうすればいい』と考えてやってきましたが、今日はこの構成をこなせなかったということです。

 終わったあとで、ブライアン(・オーサーコーチ)には、『(ミスが出たのが)今日でよかったじゃないか』と言われましたけど、いちばん大事なのは(2016年3月末の)世界選手権なので、そこへ向けて課題が見つかったのはよかったと思います。自分の演技が終わった瞬間は『下手くそだなー』と思いました。同時に、点数がどうのではなく『また一からやり直せる』といううれしさも感じました」

 羽生は悔しさを大きなバネにして、類まれな集中力の高さで進化しようとするアスリートだ。そして、300点超えという異次元の世界を2大会連続で経験したあとの今回の失敗だからこそ、彼にとって次の飛躍への大きなバネになるだろう。

「本物の王者」とは8割の状態でも勝ち続け、照準を合わせた大会では周囲を驚かせる結果を出す。それができるさらに強いアスリートへと、彼は今、成長を続けている途上にある。

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