羽生結弦の全日本4連覇が示す「勝利と記録」を両立させる難しさ (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●写真 photo by Noto Sunao

「緊張感がありすぎて、周囲への注意力を欠いてしまったのが、接触事故を起こした要因だとも思います。ただぶつかってしまったことは事実なので、そのあとや6分間練習でも、昨シーズンの中国杯のあとのNHK杯のように、周囲を意識しすぎるような感覚に若干陥っていたのではないかという思いもあります」

 通常は自然にできている「適度に周囲も見える中で自分に入り込んでいる状態」ではなく、自分の目の前しか見えないような状態になっていたのかもしれない。

 それでも、フリーではSPで失敗していた冒頭の4回転サルコウをGOE(出来ばえ点)満点の+3という出来で決め、続く4回転トーループも+3の完璧なジャンプで続けて、修正能力の高さを見せつけた。同時に、その演技には、無心に近かった直前の2戦とは違い、自分で無理やりモチベーションを上げようとしていた影響も見えていた。

「今日は足元というより、上半身をすごく意識して使おうとすることができていた」というステップは、自然に湧き出てくる戦いへの思いで攻めている時の「気迫」が少し薄まっているように感じた。そして、後半の4回転トーループで転倒してしまうと、次のトリプルアクセルも転倒。最後は疲れ切ったような状態で演技を終えた。

 それでも、フリーの得点は183・73点で、合計は286・63点を獲得。300点超えは果たせなかったものの、昨シーズンのファイナルの優勝得点に迫るスコアで、全日本4連覇を果たして強さを見せつけた。

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