羽生結弦の全日本4連覇が示す「勝利と記録」を両立させる難しさ

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●写真 photo by Noto Sunao

 全日本フィギュアスケート選手権の男子ショートプログラム(SP)で転倒しながらも102・63点を獲得し、首位発進の羽生結弦。男子フリーでもトップに立ち、4連覇を達成した。

フリーの演技後、悔しそうな表情を見せる羽生結弦フリーの演技後、悔しそうな表情を見せる羽生結弦

 11月末のNHK杯と、その2週間後のグランプリファイナルで、2試合とも完璧な演技をして連続300点超えという偉業を果たした羽生。彼自身、出場する試合はすべてノーミスの演技を目指しており、今回の全日本でも、観ている側もさらなる300点超えを期待していたはずだ。

 だが、フィギュアスケートは微妙な感覚のズレがミスを誘発する競技であり、SP、フリーともノーミスで揃えるのは極めて難しいことだ。だからこそ、スケーターはそのノーミスを目標にしている。そんな競技で、2試合連続でノーミスの演技を揃え、しかも300点超えを連発したことは、奇跡に近いことでもある。

 他の個人競技を見れば、選手が心身ともに完璧な状態にして試合に臨むのは、年に数試合しかない。五輪や世界選手権などの大会に照準を合わせ、そこまでにどう仕上げていくかに心血を注いでいるのだ。

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