鈴木明子さんが語る、全日本フィギュアの羽生結弦と宇野昌磨 (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

――羽生選手の進化を間近で見られることは、ファンにとっては本当に幸せですね。

鈴木 はい。競技を見ている人のレベルまで上げるところが羽生選手のすごい点。自分のレベルを高めつつ、観客のレベルを上げる。こんなことができるのは、世界でも羽生選手だけでしょう。羽生選手はタイトルをすべて獲得しても、攻め続ける気でいます。何かを守る気などさらさらないのではないでしょうか。オリンピックでチャンピオンになり、世界選手権もグランプリファイナルも制したのに、「まだまだ」と思えるのは羽生選手だけかもしれません。

 自分で自分に期待しているから、言葉にパワーがあります。メンタルの強さが、アスリートとしては図抜けています。異次元の強さです。そんな羽生選手の演技を見ることができるのは、本当に幸せだと思います。世界チャンピオンがさらに進化するところは、彼以外にはこれから見ることができないかもしれません。

 あえて課題を挙げるとしたら、ケガです。昨シーズンもいろいろなアクシデントに苦しみましたが、これだけはいくら気をつけていても避けられないことがあります。それに、難度の高い技に挑み続けていると、故障に見舞われる可能性が出てきます。逆にいえば、故障やケガさえなければ、羽生選手はさらに突き進んでいくはずです。


鈴木明子(すずき あきこ)プロフィール
1985年、愛知県豊橋市生まれ。6歳からスケートを始め、15歳で全日本選手権4位に入賞し注目を集める。10代後半に体調を崩し大会に出られない時期もあったが、2004年に復帰。10年バンクーバーオリンピック代表の座を獲得し、8位に入賞した。12年世界選手権銅メダル。13年の全日本選手権では、会心の演技で13回目の出場にして初優勝。14年ソチオリンピックでは、同大会から正式種目となった団体戦に日本のキャプテンとして出場し5位入賞、個人戦では8位入賞を果たす。14年の世界選手権出場を最後に、競技生活からの現役引退を発表した。引退後はプロフィギュアスケーター、振付師、解説者として活動の幅をさらに広げている。2015年12月、選手たちの心理戦から演技の舞台裏を描いた『プロのフィギュア観戦術』(PHP新書)を上梓した。

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