GPファイナル3位発進。浅田真央が秘める「逆転Vへの確信」

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 反省しながらも前向きな発言を口にする前世界女王に悲壮感はない。SP上位3人が出席した記者会見場では、ちょこんと座る10代の若手2人が小さく感じられる横で、オーラのようなものを漂わせながら、どっしりと落ち着いている浅田の姿が印象的だった。

 15歳でシニアデビューした2005年のGPファイナル。浅田は当時、優勝候補と目されていたイリーナ・スルツカヤや荒川静香ら強豪シニア勢を破って初優勝する鮮烈なデビューを飾った。トリノ五輪シーズンの新星登場に世界フィギュア界に激震が走り、強烈な出来事として今も人々の記憶に残っている。そんな歴史を刻んだGPファイナルを浅田はすでに4度制しており、今回優勝すれば、名選手として名を残すあのスルツカヤが持つ歴代最多優勝回数を抜くことになる。

 その偉業を成し遂げるには、浅田の前に立ちはだかるロシアの16歳コンビを圧倒しなければならない。かつて自身がシニアデビューしたときのような若さと勢いとあふれる才能を兼ね備えているエフゲニア・メドベデワとエレーナ・ラジオノワの2人だ。今季シニアデビュー初戦のスケートアメリカでいきなり優勝したメドベデワは、ただひとり70点台の74.58点を出してSP首位につけた。3位の浅田との点差は5.45点。トリプルアクセルという武器を持つ元世界女王にとって、決して逆転できない点数ではない。

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