中国杯SP首位発進! 浅田真央「世界でただ1人」の挑戦 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha   能登直●撮影 photo by Noto Sunao

「3ルッツは失敗だとは思っていない。マイナスと捉えず、いままでやってきた集大成だと思うので、それが試合で出来たことが私には大きいこと。(アウトエッジには)できる部分も出来ない部分もまだあるので、感覚的にはハーフハーフです。今日に関しては大目に見て、このレベルで挑戦できたことに大きな意味があったと思います」

 バンクーバー五輪後に一から取り組んで修正してきたジャンプの集大成を、たとえ不正エッジと判定されたとしても、残り少なくなってきた競技者生活の間にしっかりと試合で出していくことが大事だと考えているからだ。復帰戦となった10月3日のジャパンオープンから約1カ月。25歳の新たな挑戦は、他人が思う以上に厳しい道のりだったと思うが、そんなことはおくびにも出さず、我々が考えている以上に、ハイレベルの演技を追求してきた浅田は、根っからの勝負師に違いない。

「試合に出ると決めてから、最初の気持ちでは、ここまで挑戦できるレベルに戻ってこられるかという不安の方が大きかったですが、予想外のレベルで、私はシーズンに臨んでいる感じがします(笑)。(ここまでのレベルに達するには)もうちょっと先の予定でしたから。でも、"世界"は本当にレベルが高いので、私も後押しされてものすごく刺激をもらっています」

 浅田が1年間休養していた昨季。10代の若手選手がトップに立った。ロシア勢が台頭し、日本女子の後輩たちも世界の舞台で活躍し始めた。それでも、浅田がジュニアからシニアに上がり、一時代を築いて活躍していた頃と比べると何か物足りない。それを、浅田自身も感じ取ったのかもしれない。自分はまだ現役で十分に出来るはずだと。そして、その思いが「試合が恋しくなった」気持ちと合致したのではないだろうか。

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