【髙橋大輔の軌跡】「精一杯やった」。ソチで見せた最後の舞い

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi photo by Noto Sunao/JMPA

 彼の引退発表を聞いたとき、ソチのフリー演技後の髙橋の表情を思い出した。髙橋は、「いろんな気持ちが入り交じっていて、本当に複雑な気持ちです。悔しいのは悔しいし、力を出し切れてはいないし......。でも、精一杯やったな、とは思う」と言って笑った。

「フィギュアスケートという競技を選んで、五輪という大舞台に3回も出させてもらえたことは、本当によかったと思います。この競技をやっている限り一生満足はしないし、悔やむことはたくさんある。『あの時もうちょっと強くなれていたら』ということは、これまで何回もありました」(髙橋)

 選手たちは常に、"完璧"という果てしない夢を追い求める。そして、それを手にできるのは、スケート人生の中で一度あるかどうか。髙橋もまた、世界のトップクラスで戦うようになって以来、自らが思い描く理想の滑りを追求し、戦い続け、そして自らピリオドを打ったのだ。

 日本男子フィギュアスケートの新たな道を切り拓いてきた髙橋大輔。彼がその手に掲げていた灯火(ともしび)は、後進たちの大きな指標になった。その功績は燦然と輝き続け、その情熱は、次に続く若い世代に引き継がれていく。

■変更履歴
3ページ目3段落目にソチ五輪代表選考基準を追加掲載いたしました。
スポルティーバ編集部[2015/1/7 17:30]

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