全日本で一気に世代交代!?日本の女子フィギュアに希望 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao

 SP(ショートプログラム)2位からフリーで逆転して女王の座についた宮原は、勝負に勝つために秘策を練ってきたことが功を奏した。それがプログラム後半で跳んだダブルアクセル(2回転半)+3回転トーループの連続ジャンプだ。回転不足による減点を極力排除して、得点を稼ぐにはどうすればいいのかをコーチとともに話し合い、しっかりとした戦略の下で練習してきた。その成果が、この最後の連続ジャンプだった。

 前の試合までは、冒頭に3回転ルッツ+3回転トーループの連続ジャンプを跳んでいたが、どうしても2つめのジャンプで回転不足を取られてしまっていた。それを解消するために、ジャンプ構成を変更。冒頭の連続ジャンプを3回転ルッツ+2回転トーループ+2回転ループにして、1.1倍になるプログラムの最後にダブルアクセル+3回転トーループの連続ジャンプを組み込んだ。結果はダブルアクセルでアンダーローテーションを取られたものの、出来栄え評価での減点はなかった。戦略が見事に当たり、技術点では基礎点から10点近くの加点を得た。フリーは131.12点を出して2位の本郷に約10点差をつけ、合計でも7点近い差となる圧勝だった。

「今回の全日本はSPもフリーも良かった。フリーでは自分が思っていたよりも得点が出て優勝できてすごく嬉しい。今回新たに見つかった課題や、得られた手応えを生かして次の試合でも頑張りたい。この2年間は、回転不足をなくすことを一番に考えて練習してきて、それが少しずつ良くなってきている。これからも高く上がるジャンプを意識してやっていきたい。全日本チャンピオンになったことで自信はついたと思う。世界選手権に出てくるトップ選手たちは自分よりも上にいて、まだ追いつかないと思うけど、表彰台を目指してとにかく完璧な演技を目指して頑張りたいです」

 宮原を指導する濱田美栄コーチも、今回の内容と結果について満足そうにこう語った。

「最終滑走で登場しながらよく我慢強く滑れた。練習もコンスタントにやってきて、こちらの涙が出るくらいの練習量を謙虚に取り組む辛抱強い選手です。このチャンスをものにできると思っていた。ドキドキしながらも、安心して見ていました。2年前の世界ジュニアで大変厳しい(回転不足の)判定を受け、そのときと同じ審判だったので、この2年間のトレーニングや練習の成果を見てもらおうと言って送り出しました。今回の全日本では、自分がどう成長して、どう評価されるかを確かめる機会でした。試合というよりはテストみたいな気持ちで挑みました。まだまだ改良していかないといけないですけど、少しは進歩していることが分かったので、この調子で続けていきたい」

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