全日本3連覇。羽生結弦が見つめ直したスケーターとしての原点 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 2014年、羽生が出場した6試合(ソチ五輪、世界選手権、中国大会、NHK杯、グランプリファイナル、全日本)は、ひとつとして気持ちを緩めることが許されないものだった。特に中国でのアクシデント後の試合では、五輪の優勝も世界選手権の優勝も終わってしまえば過去のものでしかないということを強く認識させられたという。

「もちろん、(チャンピオンの)プライドや誇りを守りたいという気持ちはあります。でも、僕はそれを守るためにスケートをやっているのではないので......。僕はスケートが好きで、ジャンプが好きだからスケートをやっていますし、こうやって試合に出ている。それが、これからの自分のスケート人生の中でも、なくてはならないものだと思いました」

 常に戦い続け、常に勝ち続けたいという強い思い。羽生は苦境に追い込まれた中で、スケーターとしての原点を見つめ直し、アスリートとしての歩みを考えたのだろう。彼はこの1年間で、戦うこと、そして自分を表現し続けることの意味を、改めて再認識したはずだ。3回目の全日本選手権優勝が、12月に20歳になったばかりの羽生の、20代のスケーターとしての出発点になった。

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