【髙橋大輔の軌跡】トリノ後の着実な進化。そして、アクシデント (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi photo by Aoki Koji/AFLO SPORT

 それまでも髙橋のステップは「世界トップレベル」と評価されていた。しかし、ピップホップの曲に乗ったその滑りは、技術の高さを活かしたさらに切れ味のあるもので、これまでにはなかったような表現世界だった。「昔から音楽がかかると自然に身体が動き出していた」という髙橋のダンサーとしての資質が前面に出て、表現力でも高く評価されるようになった。

 その勢いは成績に直結した。GPシリーズはアメリカ大会、NHK杯で連勝。12月のGPファイナルでは、SPで1位になり、フリーではジャンプのミスが出てランビエールに逆転されたが、総合2位になって3年連続で表彰台を獲得した。そして、12月の全日本選手権ではSPで2位に12点以上の差をつけると、フリーでは4回転トーループを2回決めて169・15点を獲得。合計254・58点で圧勝した。

「朝の練習でニコライに『今日はやるぞ!』といわれて心の準備をしていた。4回転が2本決まったのは初めてなので、そこは自分に拍手を送りたいけど、ステップやスピンは今シーズン初めてというくらいにバテてしまったので、内容的には不満です」

 髙橋はそう言ったが、2位だった小塚崇彦との得点差は35点以上と、圧巻の全日本3連覇達成となった。

 その後、08年2月の四大陸選手権では、フリーで再度2回の4回転ジャンプに成功して175・84点を獲得。フリー、合計点(264・41)ともに、プルシェンコがトリノ五輪で出していた当時の世界歴代最高得点を塗り替えた。

 だが、優勝候補として臨んだ3月の世界選手権では「ある意味守りに入ったかな、というところもあって、アクセルを跳ぶ前に緊張してしまった」と、SPではトリプルアクセルでミスが出て3位。そしてフリーでは「4回転は1本にしようとニコライに言われたが、逃げたくなかったので2本にした」という2回目の4回転トーループで転倒。さらに中盤の連続ジャンプを予定していたトリプルアクセルでも転倒したうえ、最後の3回転ルッツに連続ジャンプをつけたことが、4回目の連続ジャンプとの判定で0点になる痛恨のミス。結局4位と表彰台を逃すことになった。

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