平昌五輪まで安泰!? 女子フィギュアはロシア王国時代へ (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao

 この時点で、優勝争いはラジオノワと最終滑走のトゥクタミシェワの2人に絞られた。トゥクタミェワが優勝のためには2シーズン前のヨーロッパ選手権で出している自己最高得点に肉薄する131点台を出さなければ勝てない状況になった。

 だが、一時ソチ五輪の星とプーチン大統領からも祝福されて注目されながら、昨年のロシア選手権では10位に落ちて、どん底から這い上がってきた18歳は逞しかった。トゥクタミシェワはプレッシャーにも動じることなく、ジャンプはすべてノーミスで、スピンとステップもすべてレベル4という完璧な演技を披露。満員の観客も味方につけて136・06点の自己最高得点を出し、合計でも自己最高の203・58点にして完全優勝を決めたのだ。

 最終的に勝負を分けたのは、ラジオノワがSPの時から見せていたジャンプの着氷の不安定さだった。彼女の明らかなミスといえたのは、単独の3回転ルッツの着氷で重心が前にかかってしまったことくらい。さらに、後半にふたつ続いたダブルアクセルでも着氷してからのスケートの抜けが悪く、GOEの加点を低めに抑えられていた。その辺りが改善されれば、演技構成点も上がり、もっと接戦になっていた可能性もある。

 結果はトゥクタミシェワが1位でラジオノワが2位。ポゴリラヤは4位でリプニツカヤは5位。だが、リプニツカヤもプログラム構成を固めて完成度を上げれば、昨年の大躍進のようにまだまだ伸びてくるはず。またポゴリラヤも長い手足をうまく使った表現力があり、もう一皮むける可能性を秘めている。

 ロシア女子では他に、ソチ五輪女王のアデリナ・ソトニコワ(18歳)もいるうえに、ジュニアGPファイナルを自己ベストの190・89点で制した15歳のエフゲニア・メドベデワも、しなやかな表現力や身体能力の高さがあり、これから一気に成長してくる気配が濃厚だ。

 世界選手権代表の3名が誰になるか予想もつかないような、ハイレベルな争い。ラジオノワが「私はもうすぐ16歳になるし、若くはない。もっと若い選手たちが3回転+3回転のコンビネーションジャンプを跳んでいる」と言うほど、ロシアの層は厚くなっている。

 ソ連時代からペアやアイスダンスでは「王国」といえる実績を残してきたロシアは、男子シングルで過去に一時代を築いてきた。だが女子の場合は、毎年行なわれる世界選手権でも金メダルが3つのみ。五輪ではソチ大会のソトニコワ以前は銀メダルが最上位だった。

 そんな過去の歴史を一気に塗り替えようとする「女子フィギュア・ロシア王国」の時代が、ここに始まった。

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