GPファイナルで下剋上を誓う羽生結弦の前進力 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 ところが、試合は荒れる展開になった。SP2位発進のジェレミー・アボット(アメリカ)は冒頭の4回転トーループが3回転になるなど、細かなミスを重ねて148・14点で合計は229・65点。また、SP1位で最終滑走だった無良崇人は、冒頭の4回転トーループで転倒するなどのミスを出してフリーは羽生を下回る148・16点(合計234・44点)と、上位選手の得点が伸びなかったのだ。

NHK杯でグランプリシリーズ初優勝を決めた村上大介NHK杯でグランプリシリーズ初優勝を決めた村上大介 優勝したのはSP3位の村上大介。「今回はシーズンベストを出して来年のGPで2試合出られるようになりたいと思っていた」という村上は、無欲で滑ったフリーで2度の4回転サルコウを決めるなど、パーフェクトな演技を見せて合計246・07点。逆転でグランプリシリーズ初優勝を決めた。2位はSP3位のセルゲイ・ボロノフ(ロシア)、3位には無良が入った。この結果、アボットは合計で羽生に0・15点及ばず、羽生の4位と、12月11日からのグランプリファイナル(バルセロナ)進出が確定した。

 思うような結果を残せなかった翌日、羽生は会見でこう話した。

「今回と中国杯の差は、焦っているか焦っていないかだと思います。中国では気合いは入っていたけど焦ってはいなかった。今回は気合いの入りかたは中国と一緒だったと思いますけど、焦りがあったからそれが響いたと思います。インタビューもそうで、話しかたがすべて早口になっていましたから。それに6分間練習も落ち着こうとはしていましたが、『周りを見なきゃ』というのが潜在意識の中にあって、集中しきれていなかったと思います」

 また、今の試合に集中しなければいけないという気持ちと、ファイナルへ行きたいという気持ちの整理をうまくつけられなかったとも言う。

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