NHK杯出場を決断した羽生結弦が優勝する確率は? (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 まずはSPでも「フリー後半の4回転ジャンプの練習になればいい」と、後半に4回転を入れることにした。そして、フリーで3回の4回転ジャンプを入れ、最初に4回転サルコウと4回転トーループを跳んだ後、基礎点が1・1倍になる後半にも4回転トーループを入れる構成にしている。

 さらに、技と技のつなぎの部分も表現をより意識し、複雑な動きを組み合わせることでより難しい演技構成にしている。とくにフリーは、本人も「休む間がない」と言うほどのハードなものだ。

 その羽生の試みが中国大会でも評価された。SPで、後半の4回転が3回転になり、3回転連続ジャンプが単発になるミスをしたものの、演技構成点は、上がスケーティングスキルとコンポジションの8・96点、下はトランディションの8・75点とほぼすべての項目で高得点を獲得していた。

 また、羽生はフリーのジャンプで5回転倒し、終盤には体力も尽きて滑りきるのがやっとだったが、中盤まではステップやつなぎでエッジを効かせた丁寧な滑りを続けた。その点が評価され、演技構成点ではパフォーマンスの8・04点以外は8点台中盤を獲得。優勝したコフトゥンを上回る84・02点を獲得していた。

 中国大会での羽生は「後半の4回転はまだ練習法が確立できていなくて確率は低いですけど、体力がある一発目の4回転なら確実に跳べる体調」と話していたが、その言葉通り、アクシデント後のフリーで、サルコウとトーループのふたつの4回転は転倒こそしたものの完全に回りきっていた。

 羽生は、26日の練習で2種類の4回転ジャンプを跳んでいた。それを考えれば、試合で力を発揮する羽生が、NHK杯のSPで冒頭の4回転トーループを成功させる確率は高いといえる。さらに後半に入れる予定の得意のトリプルアクセルと3回転ルッツ+3回転トーループを確実に跳べば90点台は十分可能で、もし4回転で転倒したとしても80点台後半には届く計算になる。

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