【フィギュア】村上佳菜子を待つファイナル進出への熾烈な戦い (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 村上の次の大会は11月28日からのNHK杯で、アメリカ大会3位のグレイシー・ゴールド(アメリカ)とカナダ大会3位の宮原知子との争い。そこで優勝した選手がファイナル進出を決め、2位以下になればフランスで進出を確定できなかった選手との競争になる。もし村上とワグナーのポイントが並んだ場合、村上はカナダ大会でワグナーが出した186・00点(SP、フリー合計)を上回らなければファイナル進出が難しくなるというきわどい戦いが待っている。

「以前は試合が怖かったこともあったけど、ソチ五輪の後は『自分がこれまでやってきたスケートを評価してもらえる機会は、この先何回かしかないんだ』と思ったら、怖がっている場合じゃないと思ったし、楽しもうと思えたんです。だから、試合に対してもリラックスした気持ちで臨めるようになった。練習はきついけど、勝つために頑張っていると思えばすごく楽しい。次のNHK杯はファイナルへ出るために勝つことを目標にしたいです。去年までの私だったらこういう時に『ベストを尽くして満足できればいい』と言っていたと思うけど、今は強気というか、『絶対に負けないぞ』という気持ちでいるんです」

 明るい笑顔を見せる村上が口にする「NHK杯で勝つための課題」は、「ジャンプの回転不足をなくすこと、要素と要素のつなぎをさらに洗練させていくこと」と言う。

 実際、今回のフリーを見ても、村上がミスをしなかったジャンプでもGOEの加点はほとんどの審判が1点で、中には0点やマイナス1点を付ける審判もいた。彼女のジャンプのひとつひとつを見ても、今回は跳ぶ前の準備動作が大きすぎた。また、要素と要素のつなぎの動作もロシア勢のように複雑さはなく、単調に見える部分が多かった。

 だが、ジャンプに自信を持てるようになれば、その動きも洗練されて加点をもらいやすくなり、そこでの余裕が、つなぎの動きにもゆとりを与えていくはず。そう考えると、早急に取り組まなければいけないのは、ジャンプの精度を上げることだろう。

 浅田真央の休養と鈴木明子の引退でエースとしての責任感が増し、勝利への意欲を持ち始めた村上。NHK杯まで3週間の取り組みと努力が、今季の彼女の行く道を大きく変えていくことになる。

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