層が厚い日本男子フィギュア。羽生結弦に続くのは? (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 羽生の最大のライバルであり、ソチ五輪銀メダルのパトリック・チャン(カナダ)は、今シーズンのグランプリ(GP)シリーズに出場せず、休養宣言をしている。チャンが来年3月の世界選手権に出場する可能性は残っているが、そうなったとしても、今シーズンの男子は羽生を中心に展開されるはずだ。

 羽生の唯一の不安材料は、ケガだろう。プログラムが高難度になればなるほど、体への負担は大きくなる。腰痛で10月のフィンランディア杯を回避したが、その原因のひとつは、おそらくハードな練習にあると考えられる。羽生は、13年3月の世界選手権直前に膝を痛め、納得のいく演技ができず悔しい思いをした経験があり、その反省から体のケアには細心の注意を払っている。今回のフィンランディア杯欠場も大事をとってのものだろう。

 いずれにしても、シーズンを通して羽生がどこまで新プログラムの完成度を高められるかが最大の見どころになってくる。

 その羽生に次ぐ位置にいる選手が、昨シーズン急成長し、世界選手権では羽生に0・33点差まで迫った町田樹だ。町田は10月5日のGPシリーズ出場選手記者会見で、今シーズンのプログラムを発表。SPは『ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲』、フリーはベートーベンの『第九交響曲』を使用することを明かした。

 10月25日からのスケートアメリカが初戦になるが、「そこへ向けて演技を磨き、自分らしい高水準の演技ができるように頑張りたい」と意気込んでいる。新しいテーマは限界や極限を意味する『極北』。SPは「悲恋の極北」、フリーは「シンフォニックスケーティングの極北」と彼らしい表現で説明した。

 昨シーズンの成長の要因となった基礎からのスケーティングのトレーニングは今年も続けている。技術をさらに磨いている町田が、どんな世界を見せてくれるのか。彼の存在もまた、日本男子フィギュア界になくてはならないものだ。

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