「大事なのは......」。鈴木明子から浅田真央へのメッセージ (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro 笹井孝祐●撮影 photo by Sasai Kosuke

──鈴木さんは、4月に初めての著書『ひとつひとつ。少しずつ。』を出版されました。

鈴木 はい。これまでの22年間のスケート人生で得たものを、本という形でみなさんに伝えられたらいいなと考えました。発売直後から多くの方に読んでいただき、大変うれしく思います。もちろん、フィギュアスケートを好きな人が多いのですが、読者の方からは「スケートファン以外の人に読んでもらいたい」という声をよく聞きます。私が本を出した狙い通りなので、うれしいです。

──通常のスポーツノンフィクションとも、いわゆる自伝とも違っていますね。

鈴木 そうですね。私は今回、偉そうに本を出しましたが、私の体験はひとつのケースにすぎません。人はみんな、いろいろな悩みを抱えて生きています。小さな悩みから、絶望的に思える悩みまでさまざまでしょう。この本は、学校や仕事で苦しんでいる人、つらい人、がんばっているのに成果が出ない人に読んでほしい。

 すばらしい自己啓発本はたくさんありますが、私の経験を読んでもらうことによって、何かしらのヒントになればいい。誰かがつまずいたときにちょっとした支えになれるような、悩んでいる人の背中にそっと手を添えてあげられるような、そんな本になればいいですね。

最後の大会となった世界選手権を笑顔で終えた photo by Noto Sunao(a presto)最後の大会となった世界選手権を笑顔で終えた photo by Noto Sunao(a presto)──どうして『ひとつひとつ。少しずつ。』というタイトルになったのですか?

鈴木 それは私がずっと、そんな生き方をしてきたからです。ジャンプを覚えるときでも、なにかを変えるときでも、私は時間がかかるタイプです。ちょっと教えられただけですぐできる人もいますが、私はそうではありません。人の何倍も練習してやっと習得できます。だから、ひとつひとつ、少しずつ、積み重ねてきました。

 今できることを一生懸命にやらなければ、未来にはつながりません。たしかに、自分がやれることを少しずつやっていくことは、すごく根気がいります。「嫌になりませんか?」とよく聞かれますが、嫌になるもならないも、私にはそういう生き方しかできませんから。

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