世界選手権優勝。まだ伸びしろが見える浅田真央のこれから (2ページ目)

  • 辛仁夏●文text by Synn Yinha
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

「オリンピックでは順位ではなく、この4年間、一から見直してやってきたことを出そうと思いました。そして、今回の世界選手権ではSPとフリーの両方をそろえて自分がやりきったという演技をすることが目標だったので、それができて嬉しいです。そして、今シーズンはバンクーバー後に一から見直してきたことがようやく花開いたかなという思いです。悔しかったり嬉しかったり、いろいろなことがありましたけど、改めて今日終えてみてフィギュアスケートっていいなと感じています」
 
 ソチ五輪では見せることができなかったSPでのノーミス演技を、この世界選手権で披露できたのは「ソチでの悔しさ」を晴らす気持ちが強かったからだという。「ソチで悔しかったんだ、悔しかったんだ」と思いながら滑ったというSP。冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を鮮やかに跳んで見せて波に乗り、透明感のある完璧な演技は今シーズン一番の出来だった。一番の武器であるトリプルアクセルではGOE(出来栄え点)が1.86点もついたほどだ。この歴代世界最高得点をたたき出した演技に、1万7千人を超える大観衆も引き込まれ、スタンディングオベーションで応えた。

「今回のSPは、今までの中でベスト3に入るくらいの最高の演技でした。いつもは得点を目標にはしていませんが、世界最高点と聞いて嬉しかった。集大成のシーズンとしては最高です。SPとフリーともに自分の精一杯の演技ができました。SPでは振付師のローリー(・ニコル)にようやく一番最高の演技を見せることができて、ローリーも喜んでいましたし、私も嬉しかった。いい演技で恩返しができて良かったです」
 
 大きな目標だった五輪金メダルは手にすることができなかったが、ソチ五輪から帰国後、浅田はしっかりと気持ちを切り替えてこの世界選手権に向けて練習に励んできた。それは佐藤信夫コーチも舌を巻くほどの入れ込みようだったという。「シーズン最後となる世界選手権でオリンピックの悔しかった思いをぶつけて絶対にやるんだという気持ちで毎日、一日も無駄にせずにやってきました」と胸を張る浅田の意気込みは相当なものだったに違いない。

 日本選手として最多となる3度目の世界タイトルは、これまでの2回と比べても格別な味わいになっているのではないだろうか。「永遠のライバル」であるキム・ヨナと切磋琢磨してトップスケーターになった浅田が、そのヨナが持っていた1つの記録(SP世界最高得点)を塗り替えることができ、日本開催の大きな大会で「やり切った」と言える演技ができて、結果もしっかりと残したからだ。

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