【フィギュア】もし羽生結弦が5回転ジャンプに成功したら?

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by Getty Images

 ゆえに、5回転ジャンプは現行ルールではノンリステッド(表にない)ジャンプに組み込まれ、いくら4回転よりも1回転多く回る5回転を跳んでも得点はなしということになるわけだ。ノンリステッドジャンプといえば、フリップジャンプの一種でバレエジャンプ(空中で足を横に開いて跳ぶ)も対象となっており、跳ばなければならないジャンプの1枠には組み込まれないし、得点もつかない。だから5回転もバレエジャンプも、現行ルール上ではリステット(表にある)のジャンプではなく、「価値を認めていないジャンプなので点数はなし」ということになっているという。

 このことからも、仮にソチ五輪で羽生が5回転を跳んでも、メダル争いには一つもプラスにはならない可能性が高く、無駄なエネルギーを使うことになるはずだ。もちろん、あくまでも仮定の話であり、五輪本番で羽生が挑むジャンプは4回転のトーループとサルコウの2種類になるだろう。

 では最後に、もし5回転を跳んで得点がつくようになったら何点になるだろうか。竹内氏は「ジャンプの得点設定には係数があるのでそれに従うことになる」と言う。明確な得点を出すことはできないが、独断で予想すれば、5回転トーループは20点前後に設定してもいいのではないだろうか。

 4回転を跳ぶのも至難の業と言われる現在だが、トップ選手のジャンプ技術を見ると、5回転ジャンプは夢物語ではないという気もする。人間は計り知れない能力と欲望、それに知恵と工夫を持つだけに、いつの日か、5回転時代の到来もあるかもしれない。女子選手として唯一トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳ぶ浅田真央を指導し、現役時代には2回転ルッツを日本人として初めて跳んだという佐藤信夫コーチに、近い将来、男子が5回転を跳ぶ時代は来るかと聞いてみた。

「分かりません。ないともあるとも言い切れませんね」と、答えてくれた。


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