絶対王者チャンとの差を詰めてきた、羽生結弦2年間の成長 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 全日本のフリーでは転倒したが、羽生は「(フリーでの4回転)サルコウの失敗は経験不足だと思います。(その次の)4回転トーループを(転倒せずに)耐えられたのは、これまで失敗をしてきた経験があってこそ。サルコウも失敗を繰り返すことで成功する確率が高くなってくるはず」と前を向く。

視線はソチへ。羽生結弦が初の五輪の舞台に向かう視線はソチへ。羽生結弦が初の五輪の舞台に向かう GPシリーズフランス大会で、チャンの完璧な演技の前に敗れた時、羽生は「スケーターにとって、SP、フリーともに完璧な演技をできるのは、スケート人生の中で数回あればいいもの。そういう演技をチャン選手がやった場に、選手として一緒にいられたのは幸運だと思います」と話していた。

 百戦錬磨の選手になればなるほど、大舞台で集中力を高めて完璧に近い演技をしてくる。その点、ソチ五輪では誰が完璧な演技をするかが金メダル争いのポイントになるだろう。今シーズンの状態を見れば、その戦いに参加できるのはチャンと羽生が有力という状況だ。

 また、羽生のコーチであるブライアン・オーサーは、選手として2回、コーチとして1回、五輪を経験している。大会までにどのように準備をすればいいかの知見も豊富であり、大会本番へのプレッシャーがあるなかで、ソチでピークが来るように調整もしっかりできるはずだ。

 この2年間、王者チャンを追いかけてきた羽生は、4回転サルコウやスタミナ面などに課題があることを自覚しており、伸び代はまだまだある。五輪代表に決まった今、羽生は「ここをスタートラインに一歩一歩踏み出していきたい。体のコンディションはいい感じなので、体調管理をしっかりして、頑張っていきたい」とソチの舞台をしっかり見据えている。

 2014年2月7日から開幕するソチ五輪で、熱い戦いが期待できそうだ。

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