絶対王者チャンとの差を詰めてきた、羽生結弦2年間の成長

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 12月22日の全日本フィギュアスケート選手権、男子フリー。最終組の6人がリンクへ飛び出すと、観客席は燃え上がるような雰囲気に包まれた。観客は、ソチ五輪代表3枠を争う最後の戦いに、それぞれの思いを込めて声援を送っていた。

 フリーの最終組、1番滑走の羽生結弦(ゆづる)は、冒頭の4回転サルコウで転倒というスタート。次の4回転トーループは何とかこらえたものの、その後、自信に満ちあふれた演技という訳にはいかなかった。代表はほぼ手にしていたが、初めて経験する五輪代表最終選考会というプレッシャーに飲み込まれたのか、少し重苦しさを感じさせる演技となった。それでも、冒頭の転倒以外は各要素をミスなくこなし、194・70の高得点をマーク。

優勝は羽生。2位に町田樹(たつき)、3位には小塚崇彦が入った優勝は羽生。2位に町田樹(たつき)、3位には小塚崇彦が入った 前日のショートプログラム(SP)で全日本史上初となる100点越えの103・10点を記録していた羽生は、SPでもフリーでもファイブコンポーネンツ(芸術要素点)で9点台を並べ、合計297・80点で全日本連覇を達成。五輪代表を決めた。

 本番のソチ五輪を考えると、GPファイナル、全日本選手権で高得点を出した羽生が、王者のパトリック・チャン(カナダ)と対等に戦うことができる心強い状況になっている。

 ここ2年間で羽生とチャンの直接対決は5回。当初は大きかった両者の差だったが、内容と点数を見ると、かなり接近してきているといえる。

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