GPファイナル圧勝。浅田真央が今後、迫られる「究極の選択」 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

「特に女子選手にとって、トリプルアクセルを2度跳ぶことはとんでもなく能力的に難しいということを痛感させられたし、体力的に非常にエネルギーを使うわけですからリスクもいっぱいある。ですが、練習ではできていますし、もう少し頑張って何とか彼女の夢をかなえられたらいいなと思っています。(3回転ルッツや3+3回転を外すリスクについては)最初からそれを計算すると、止めましょうということになってきますから、それは今は言わないで、とにかく可能性を追求していってあげたいと思っています」

 バンクーバー五輪で金メダルを争ったライバルのキム・ヨナ(韓国)は、GPファイナルと同じ日程で行なわれた国際大会ゴールデン・スピン・ザブレブ(クロアチア)で右足負傷からの復帰を果たし、SPで今季世界最高得点を出して優勝を飾った。トリプルアクセルを跳ぶプログラムで滑ったGPファイナルの浅田よりも、SPと合計では得点で上回っていた。同じ土俵での戦いではないので単純な比較はできないが、得点だけを見れば負けたことになる。

 それは今回、得点源となる大技2つで失敗して得点を伸ばすことができなかったせいでもあるだろう。それでも、ソチ五輪でトリプルアクセルに2度挑戦することが最善の策なのか。難しい選択を迫られるかもしれない。実際、佐藤コーチも今後については含みを持たせている。

 浅田自身は「今回挑もうとしたフリープログラムが最高レベルのジャンプ構成です。いまはこの構成でやりたいと思っています」と、あくまでもトリプルアクセル2発を目指していくと意志は固い。ソチ五輪まであと2ヵ月。今後は、トリプルアクセルの成功率をどこまで上げられるかに懸かってくる。

 最終的には五輪前にどう戦うかを決めることになりそうだ。前回のバンクーバー大会と同じようにトリプルアクセルを2本跳んで納得のいく演技を目指すのか、それとも戦略的妥協をして大技を1本にし、プログラムの完成度を高める演技を目指すのか。この3年間のジャンプとスケーティングの強化により演技全体の質は格段にレベルアップしている。どんな答えを導き出すのか、注目したいところだ。

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