GPファイナル圧勝。浅田真央が今後、迫られる「究極の選択」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 首位に立ったショートプログラム(SP)では、回転不足と判定されたものの「きれいに跳べた」と手応えを掴んでいた。フリーでは2度跳び、冒頭は久々の転倒となり、2本目は回転不足にオーバーターンがついてしまい、後ろに2回転トーループの連続ジャンプをつけることができなかった。本来であれば、トリプルアクセルの基礎点は「8.5点」なので、この2つの大技と2回転ジャンプの基礎点を単純に計算したら18.3点を稼げるはずだが、ジャンプの失敗によってGOE(技の出来ばえ)でも減点されて、単独の基礎点より低い7.59点しか出なかった。浅田にとって一番の武器であるトリプルアクセルは、五輪金メダル争いを勝ち抜くためには必要な大技であり、モチベーションの原動力でもあるが、ハイリスクハイリターンの技であることはいまでも変わっていない。

 今季はシーズン初戦のジャパンオープンから試合で計8度跳んでいる大技も、まだ1度も完璧には成功させておらず、GOEでもプラス評価をもらっていない。それでも、ジャンプの失敗を引きずらずにしっかりと立て直して、『ピアノ協奏曲第2番』の曲に乗って最後まで滑りきってみせた。たとえ大技で高得点が出せなくても、この3年間に修正強化してきたスケーティングやスピンの質の高さとプログラムの出来ばえなどが評価されて演技構成点で高得点に結びつけ、カバーできることは大きい。

「最初のトリプルアクセルで転倒してしまい、体力を奪われてしまった中できちんと立て直せたかなとは思っています。2発目も落ち着いて跳ぼうとしましたが、1発目に転倒しまうと次のジャンプを成功させるのはなかなか難しい。まだシミュレーションができていない状況での挑戦だったので、もう少し練習が必要かなという風に思っています」

「集大成の演技」を目指すオリンピックシーズンで「最高レベルの演技」を目標に掲げて取り組む浅田。彼女にとっての「最高レベル」とは何か。このGPファイナルで見せた、トリプルアクセルを2本跳ぶというフリーのジャンプは、バンクーバー五輪のときとまったく同じである。しかし、この構成にすると、これまで目指してきた3回転ルッツと3フリップ+3ループの連続ジャンプを外さざるを得ない。つまり、浅田の武器である6種類の3回転を跳ぶこともなくなり、高得点が期待できる3+3回転の連続ジャンプも跳ばないために、構成としては必ずしも「最高レベル」とは言えないのではないか。佐藤コーチもこう語る。

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