【フィギュア】全日本まで45日。安藤美姫は本来の力を取り戻せるか? (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 この東日本選手権で6位以下になれば全日本選手権出場権は得られず、ソチ五輪出場の夢はその時点で途絶えてしまう。ショートプログラムの後、そんな危機的状況に追い込まれ、あきらめが生じた時、大会前の自分の気持ちを思い出したのだ。

 覚悟を持って滑り始めたフリー、安藤は冒頭の3回転ルッツの着地で乱れながらも、手を少し突くだけでこらえ、減点も最小限に止めると、前日失敗した3回転ループを決めた。その後の滑りや、スピンとステップはスピードのない演技にはなったが、ジャンプは大きなミスなく演じ切った。

 結果はフリーでは1位の105・24点。合計点を147・21点にして、最終的にショートプログラム1位の西野友毬(ゆうき)には追いつけなかったが2位。全日本出場権を獲得し、ソチへの夢をつないだ。

バルテル・リッツォコーチからのアドバイスを受ける安藤バルテル・リッツォコーチからのアドバイスを受ける安藤  表彰式の後、全日本選手権進出決定の感想を求められた安藤は、少し考えてから「頑張らないといけないですね」と苦笑いを浮かべた。

「体力的にも技術的にもまだまだ戦えるレベルに戻っていないのでたいへんだけど、もう一度日本で演技できるチャンスをもらったのだから、それが(モチベーションになって)プラスに働いていけばいいかなと思います。全日本選手権には他の(日本のトップ)選手も出てくるから、2シーズン前の自分のスケートに近づけるように頑張って、自分の力を100%出せるように練習していきたい」

 こう話すように、安藤のコンディションが、まだまだトップと戦えるレベルでないのは確かだ。ジャンプこそ丁寧にやればこなせるレベルになっているが、スピンやステップはまだまだスピード不足。滑り自体も世界選手権で優勝した2年前のようなキレはない。そのため、彼女の持ち味である表現力も十分に発揮されていない状態だ。

 だが、以前と同じ高いレベルで戦うために、自分に何が足りないかは、安藤自身がいちばんよくわかっている。

「体力というより、脚の筋力が弱くなっています。筋力が弱いと演技のスピード感とか、スケーティングの部分の足の繰り出しや後半のジャンプなど、すべてに影響してくるので、それは(課題として)明確になっていますね」

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