【フィギュアスケート】ペア不在!?日本のソチ五輪団体戦はどうなるのか (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Yinha Synn
  • photo by Nakamura Hiroyuki

 木原にはまったくペアの経験がない。そこで陸上トレーニングによって基礎体力作りを行ないながら、氷上では毎日、45分間のセッションを3セット半という練習に取り組んでいるという。エキシビションのプログラムを通しながらの練習では、ペア特有のサイド・バイ・サイド(2人が隣り合って同じ演技を行なう)のソロジャンプやソロスピン、シャドースケーティング(2人が影のように同じ動きを行なう)、デススパイラル(男性が中心となり女性が身体を倒して円を描く)などをこなしているそうだ。男性が女性を投げるスロージャンプでも、すでに3回転サルコーを成功させているとか。

「責任を感じる重たい仕事だが、お互いにできる限りのことをやろうということで一生懸命にやっています。オリンピックに出場できるようになったらいいね、というのが第一目標ですが、心身ともに健康でケガがないように、焦ることなくバランスを見ながら取り組んでいます。男性のペア選手を育てるには通常3年ぐらいかかると言われますが、(木原は)シングル選手としていいものを持っていますし、いい感覚を持っているので、早く目的に達成できる可能性はあります」と、佐藤コーチは現状に悲観することなく語った。

 現在のところ、日本は五輪団体戦の出場資格は持っていない。個人種目の男女シングルでは五輪出場枠を確保したが、カップル種目のペアとアイスダンスでは五輪出場枠を得られていないからだ。五輪では、個人種目のうち3カテゴリーの出場枠を獲得していなければ、10ヵ国で争う団体戦には出場できないことになっている。よって、日本が五輪団体戦に出場するためには、五輪最終予選会を兼ねた9月のネーベルホルン杯(ドイツ)で、ペアとアイスダンスのいずれかで五輪切符を取らなければならない。今のところ、バンクーバー五輪日本代表だったアイスダンスのリード姉弟組が、予選会でソチ五輪出場枠を獲得することに団体戦出場の命運がかかっている。

 もし日本が団体戦の出場資格を得ることができても、新しく誕生したばかりの高橋・木原ペアには国際大会で得たポイントがまだないため、五輪に出場するためのミニマムポイント(必要最低限の技術点)を取らなければいけないという試練が待っている。これらをすべてクリアした上で、はじめて日本はソチ五輪の団体戦に全4カテゴリーで出場できることになる。

「今はとにかく木原の上半身を鍛えて筋力をつけ、ペアスケーターとしての基本的な技術を習得させるのと同時に、高橋と木原が一緒に滑る時間を増やしていくことが必要。2人の相性はすごくいいし、(木原がペアの)コツを掴めばいい感じなると思う」(佐藤コーチ)

 今後は時間との勝負になりそうだ。

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