浅田真央が『アイ・ガット・リズム』を選んだ理由 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Yinha Synn
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 今季の浅田はSP、フリーの両プログラムともジャッジから高い評価を得ており、シーズンが深まるごとに完成度を増してきた。そして、先月の四大陸選手権ではこのプログラムに大きな武器となる浅田の代名詞でもあるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)が今季初めて組み込まれた。SPでは成功させたが、フリーでは両足着氷の回転不足に終わった。久々に試合で決めることができたこの大技を、もちろん世界フィギュアの舞台でも跳ぶつもりだ。本当の意味で完成された、浅田曰く「今できる最高のプログラム」が出来上がり、大舞台でミスなく滑ることができたら、3年ぶりに世界女王の座に就く可能性は高い。

 一方、シーズン中にソチ五輪を狙うと宣言した鈴木明子は、SP『キル・ビル』で映画を基にした「強くてワイルドな女性」を強烈な目力とともに演じている。また、フリーはシルク・ドゥ・ソレイユの『O(オー)』を「やりたい曲だった」と選曲して、その世界観を大事にしながらもしっかりと自分のイメージに落とし込んで滑っている。バンクーバー五輪のときに髙橋大輔のフリー『道』のプログラムを作った振付師のパスカーレ・カメレンゴ氏からは「鳥のイメージ」を要求されているという。曲自体は水をテーマにした曲だが、清らかな水の上で羽ばたいている美しく光り輝く青い鳥を連想させる演技は秀逸で素晴らしいプログラムに仕上がった。
 
 また、着実にステップを踏んで代表の座を掴んだ村上佳菜子のSPは、中野友加里も使用したことのある『プレイヤー・フォー・テイラー』。「あこがれの曲でよく知っている音楽」と自ら希望して、職人肌の振付師マリーナ・ズエワ氏に振付けてもらった。「みんなの幸せを祈ること」を表現したプログラムだという。『ピアソラのタンゴメドレー』のフリーは洗練されたプログラム作りに定評があるカメレンゴ氏が振付けた。大人の女性を緩急のついた曲調に乗って演じる。この情熱的な振り付けに磨きをかけるために、創作舞踏のプロダンサーである平山素子氏に指導を受けたことが、どこまでプログラムの完成度に反映されるかにも注目だ。

 日本を代表する3選手はそれぞれのプログラムをどのような思いで滑っているのか。そこに注目すれば、世界フィギュアをちょっと違った角度からも楽しめるのではないか。

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