【フィギュアスケート】浅田真央、完全復活。トリプルアクセルに大きな変化

  • 辛仁夏●文 text by Yinha Synn
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 浅田真央といえば、「天才少女」と呼ばれていた10代前半からトリプルアクセルの申し子だった。この大技を女子選手で武器にできたのは、これまでの歴史でもわずか数人しかいない。日本の伊藤みどりがその筆頭格だったのは、誰もが認めるところだ。

 その後継者として登場した浅田は、「トリプルアクセルを跳ぶことが大好きで、自分にとって一番の強み」だと信じて疑っていなかった。トリノ五輪シーズンに鮮烈なシニアデビューを飾り、バンクーバー五輪を見据えていたジュニア上がりの浅田が一気にスターダムに躍り出たのは、武器のトリプルアクセルで旋風を巻き起こし、シニア勢を圧倒するほどの強烈な勢いを持っていたからだろう。

 過去には試合で跳んでいた女子選手もわずかにいたトリプルアクセルだが、現在はシニアのトップ勢の中では唯一、浅田が試合で成功させている(ロシアのジュニア選手にはトリプルアクセルを跳ぶ逸材がいると言われている)。

 四大陸選手権のSPとフリーで挑んだトリプルアクセルは、これまで浅田が跳んでいた大技とは見た目も質も違っていた。明らかにトリプルアクセルの跳び方に変化があった。フィギュアスケートにあまり詳しくない人が観たら、何が以前と違うのかわかりにくいかもしれない。あるいは「簡単そうに跳んだ今のがトリプルアクセル?」と思った人がいたかもしれない。今回、SPで浅田が挑んだトリプルアクセルは、きっちりと認定され、その上で1.57点の加点までつくほどの完璧なジャンプだった。どこが以前と違い、どんな変化があったのか。

 まず、バンクーバー五輪以後のここ数年、トリプルアクセルを跳んでも回転不足などで認定されなかった原因は、すべてのジャンプが全体的に崩れてしまったことが大きかった。ジャンプを跳ぶ前のスケーティングスピードが失速状態で、流れの中で跳ぶことができず、また跳ぶときも勢いがついていない分、余計な上下運動をしなければならなかったからだ。

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