NHK杯優勝の浅田真央。フリー失速にも取り戻した自信 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

「スピードに乗ったまま大きく立派なジャンプを跳ぶようにしようと努力していますが、過去からの習慣で、スピードを殺して何とかまとめようとして回転が不足ぎみの状態で降りてくるので、それだけは絶対にしないように、何とかクリアなものにしていきたいです。ただ、この課題を克服するにはまだまだ道半ばかなと思っています。スピードが出れば出るほどちょっとした狂いが表面化してきますから、スピードを何とかしようと無理に頑張らなければいけないという心理的な影響からミスが出て、ジャンプで俗にいうパンクという状態(不発)につながってしまう。自分で感覚的には分かっているつもりでも、自分で自分に裏切られることがあるので、もう少し繰り返し、繰り返しの練習が必要だと思います」

 NHK杯で見せた浅田の滑りは、確かにこれまでに比べるとジャンプを跳ぶ前のスピードが落ちなくなっていたように思う。本当にソチ五輪までに浅田や佐藤コーチが目指すジャンプが仕上がれば、演技構成点で高得点を計算できる浅田にとっては、台頭するロシアの有望な若手勢らとの勝負にも簡単には負けないはずだ。実際、中国杯では昨季世界ジュニア女王でロシアの新星ユリア・リプニツカヤに、ショートプログラム(SP)でトップを譲ったものの、フリーの演技構成点で7点近い大差をつけて逆転優勝をさらっている。

 NHK杯でも、SPでは上位勢が3+3回転の連続ジャンプを跳んできているのに対して、浅田は武器のトリプルアクセルはもちろん、他の選手が得点稼ぎで跳ぶ3+3回転の連続ジャンプも跳ばずに、技術点も演技構成点もただ1人30点台をマークして今季世界最高の67.95点の高得点を叩き出している。

 これは安定したジャンプに加え、ステップやスピンもレベル4という高い評価を受けたからだ。これには、これまで浅田がこだわって跳び続けてきたトリプルアクセルを跳ばないという選択をしたことも影響しているだろう。あまりにもトリプルアクセルに固執しすぎたせいで、他のエレメンツ(要素)が疎かになっていたことを見直した策でもある。

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