NHK杯は羽生結弦が制覇。GPファイナルで日本人男子の争い激化 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)


 だが、24日のフリーでは、4回転を3回入れたフェルナンデスがミスを連発して早々に優勝争いから脱落。続く髙橋も「演技の面では練習通りに100%できたが、2本目の4回転のミスとステップでスケートが溝にはまってグラグラしてしまったのが悔しい」と言うように羽生を脅かすところまではいかなかった。

 ライバルふたりの結果を見ていた羽生は最終滑走。ただ、「4回転も最初のトーループは落ち着いていけたし、サルコウもしっかりイメージをつくっていた」というものの、力みもあった。それが終盤での疲労を誘発したのかもしれない。

 フリープログラム最後のジャンプだった3回転ルッツで転倒、さらに、チェンジフットコンビネーションスピンでは、シットスピンの体勢に入ったところで脚の力が抜け手をついてしまったのだ。

 冒頭の4回転トーループのあとの4回転サルコウでミスもあったが、それでも、出来栄えの減点を1・71点に抑えたのが大きかった。「後半はバテていたが、4回転ジャンプを2本決めていた。特にふたつ目のサルコウをステップアウトでまとめたところは能力の高さを感じた」と髙橋大輔が言うように、羽生はミスを最小限にすることができていた。

 羽生を追い上げたかった髙橋は、ふたつ目の4回転トーループが回転不足になり、中盤のトリプルアクセルでは手をつくミス。結局、ショートプログラム(SP)で1位の羽生が要素点で髙橋を6・84点上回り、逃げきり優勝を決めたのだ。

「フリーもまとめられて、SPだけではなく総合得点でも自己ベストを出せたことにまずは安心しました。フリーでは小さいミスが続いた中でも160点台を出せたのは収穫です。後半疲れてしまったけど、集中力は切れなかったから......。スピンで転んだ時はさすがに少し集中が切れたけど、自分の中でモチベーションを持って流れを大切にしようと思っていたので最後のスピンも集中力を取り戻すことができました。ただ、地元開催の大会だからこういう力も出せたのだと思う」(羽生)

 フリーを何とかまとめ、1位というポジションを得て「GPファイナルへ進出できるのは大きい」という羽生だが、課題はまだある。芸術要素点はスケーティングスキルの8・07点以外は7点台。要素点では髙橋を上回ったが、芸術要素点では逆に4・28点差をつけられていた。フリーの滑りや演技は、メリハリがしっかり効いたSPの力強い滑りに比べて上体の使い方も固くなって単調になり、余裕がなかった。その点ではまだまだ完成とはいえないだろう。

 一方、髙橋はこの大会、中国杯よりいい演技をして、ファイナルへ進むことが最大の目標だった。「4回転ジャンプではミスもしたが、これから試合や練習で詰めていけばもっと良くなると感じている。今やっているジャンプへの入り方も、あとは細かい部分を修正するだけだと思うから、形はできていると思う」と、安堵の表情を浮かべた。

 髙橋が今目標にしているのは、他の選手たちの優れているところだ。パトリック・チャン(カナダ)の5コンポーネンツ(※)の質の高さや後半の強さ。羽生の流れのあるジャンプの着地などを意識し、自らの技術をさらに磨き上げようとしている。※スケートのスキル、トランジッション(演技のつなぎ)、パフォーマンス、振り付け、音楽の解釈

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る