井上尚弥にヒットした「4つのパンチ」ーーその共通点から「打倒モンスター」が見込めるライバル候補を考えてみた
東京ドームで行なわれたスーパーバンタム級4団体統一王座の防衛戦で、ルイス・ネリ(メキシコ)を6回TKOで破った"モンスター"井上尚弥。
井上は1ラウンドにネリの左フックを被弾しキャリア初のダウンを喫したが、冷静にリカバリーして試合の主導権を掌握。終わってみれば、いつもどおりの完勝だった。
このタイトルマッチであらためて見えた井上の強さを振り返りながら、今後ライバルとなりうる選手について考えていきたい。
ボクシング界で圧倒的な強さを見せている井上尚弥
【初回にヒヤリもワンサイドで完勝】
これまでにない力みがあった。東京ドームという大舞台に4万3000人の観客。現に「浮き足だった部分もあったかもしれない」と井上は試合後の会見で話していた。
一方のネリは、WBC世界バンタム級の王座を12回守った山中慎介とのいわくつきの2試合で、ドーピング違反に体重超過と重大な違反を犯した因縁の相手。それでも、その分厚い攻撃力には定評があった。
そんなネリの馬力を封じるため、井上は威嚇的なビッグパンチで自分のスタンスをつくりにいった。
ラウンド序盤、ネリのパンチの軌道やタイミングを測ることよりも、このアクションに重きを置いた部分はあったかもしれない。
井上には珍しく、ジャブを受ける場面もあった。そして、接近戦で左アッパー、返しの右のパンチで空間をつくろうとした矢先に、独特の軌道で飛んできたネリの左フックをあごに受けてダウンを喫した。
ここで井上は冷静になった。追撃を上体のこなしとステップワークでほぼ完全に封じてラウンド後半をリカバリー。すると次のラウンドからは、スピーディーなステップワークと出入りを重視した動きに加え、正確かつ多彩なジャブでネリの出足をくじいた。
2ラウンドにはバックステップでネリのパンチをかわしながら、コンパクトな左フックを決めてダウンを奪い返す。それ以降は、手足のスピードでネリを完全に引き離し、ワンサイドゲームとなった。
井上は正確なパンチでダメージをコンスタントに与え、5ラウンドと6ラウンドにダウンを追加してネリを完膚なきまでに打ち倒した。
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