結婚後もハードコアマッチで味わう「生きてる感じ」。ハイパーミサヲは「らしくあらねばならない」という概念を破壊し続ける (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko
  • photo by 林ユバ

「らしくあらねばならない」を破壊したい

 2015年2月28日、新宿FACE大会にて、MIZUHOと組み、対KANNA&木場千景戦でデビュー。上下の緑ジャージに、布のアイマスク、唐草マントという出で立ちだ。ミサヲはデビュー戦から一貫して、ヒーローキャラを貫いている。

「ビッグサイトで見た路上プロレスで、プロレスラーがヒーローに見えたんです。自分の感情が無だったところを動かしてくれたのがプロレスラーだったので、応募する時も『プロレスラーみたいなヒーローになりたい』って書きました」

自身の人生について語ったハイパーミサヲ自身の人生について語ったハイパーミサヲこの記事に関連する写真を見る マスクを着けることにしたのは、本当の自分に自信がないから。「本来、自分は人前に出るような人間ではない」という思いがある。しかしプロレスに出会い、ヒーローになりたいという欲求を持ってしまった。その矛盾を、マスクを着けることによって解消している。

 子供の頃から繊細で、心の闇が深い。今でもふだんの生活では生きづらさを感じている。しかしリング上では、明るくコミカルに道化てみせる。

「逆張り人間なんですよね。『らしくあらねばならない』みたいに決めつけられるのが本当に嫌なんです。勝手な思い込みなのか、社会からの見えざるメッセージなのか、そういうものに振り回されて苦しめられてきた人生なので、そういうものを破壊したくて、ふざけたことをやっている」

「ヒーローになりたい」と言いながら、ヒーローらしからぬゲスな反則技を使う。東京女子プロレスらしく、可愛く華やかなプロレスをしなければいけないのかもしれないが、真逆の路線を行く。2020年11月、結婚したから引退するのかと思いきや、現役を続行した。

 ハイパーミサヲは、ありとあらゆる固定観念を破壊したい。

デスマッチで味わった「生きてる感じ」

 目指すプロレスラー像は、マリーナ・アブラモヴィッチ。ユーゴスラビア出身のパフォーマンス・アーティストだ。自身の肉体に暴力を加える過激なパフォーマンスで世界的に知られる。

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