元120円Jリーガーが格闘技プロ2勝目。「職業・挑戦者」が明かす次なる挑戦とは

  • 栗原正夫●文・写真 text&photo by Kurihara Masao

なぜ無謀な挑戦を続けるのか

「通訳として国立のピッチに立ったことはあったんですけどね。人生、何があるかわからない(笑)。でも、会場の雰囲気に呑まれることはなかったし、緊張感よりも高揚感のほうを強く感じました」

 格闘家に転身後は、毎年12月31日にさいたまスーパーアリーナで行なわれるのが恒例の「RIZIN」(総合格闘技イベント)への出場を目標にしてきたが、この日は新たにYA-MAN(26/TARGET SHIBUYA)とオープンフィンガーグローブで戦いたいと挑戦を表明した。YA-MANは昨年末の「RIZIN」でも皇治(33=TEAM ONE)を下すなど、いま勢いに乗っている注目のキックボクサーとして知られる。

「勝てるわけがないと思われる無謀なことに挑むのが職業・挑戦者。『ふざけんな、どうせ売名行為だろ! 炎上商法』と言われるかもしれない。向こうにメリットがないことは百も承知で、言った瞬間に自分自身が怖くなりましたし、世の中にバカにされることはわかっています。でも、Jリーガーを目指すと言った時も、格闘家になると言った時も、笑われながら実現してきた。だったら、もう1回笑われようかな、と。

 中途半端でこんなことは言えないし、ストリート上がりのYA-MAN選手におっさんの僕が本気でぶつかっていって日本を元気にしたい。周りからは絶対無理だって言われましたが、やれるかどうかは別にして、言うのはタダ(笑)。挑戦者ならびびっていないで、勝負するしかないじゃないですか」

 試合をすれば、当然、勝ち負けがつく。ただ、安彦は世界チャンピオンを目指しているわけではないし、勝ち負け以上にその過程や経過が大事だと思っているからこそ、無謀な挑戦にも怯むことなく挑むことができるのだろう。

「大事なのは、仮に負けたとしても自分の戦いを喜んでもらえるかどうか。自分をとことん追い込んでいれば、仮に負けたとしても拍手をもらえるでしょうし、感動を与えられる気がする。それが僕の目指すべき道ですから」

 決して色物ではないし、そこに冗談はないのだ。

「うまい、強いはほかの選手に任せます。僕は生き様で勝負したい。『コイツ、ふざけたこと言ってるけど、なんかスゲェな』『勇気をもらえた』。そんなふうに誰かの活力になれたらそれでいいんです」

 目先の勝利よりも、狙うのは人生のジャイアントキリング。挑戦者、安彦の戦いはどこまで続くのか。

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