19歳の慶應ガールがレスリング五輪金メダリストを撃破。尾﨑野乃香は高らかに宣言「62キロ級は私の階級」

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

勉強もレスリングも大好き

 日々のスパーリングで、尾﨑はいつも残り時間と得点差を自分で設定し、それを意識して戦っているという。それがこの大一番でも落ち着いて戦況を把握できた要因だろう。相手に攻め入る隙を一切与えず、プレッシャーをかけ続けながらもミスを犯さず、冷静に闘うレスリングを貫けた。

 オリンピック3連覇を成し遂げた吉田沙保里に憧れ、尾﨑は小学2年時からレスリングを始める。小学5年・6年で全国少年少女選手権大会2連覇を果たした一方、受験勉強の末に東京・成城学園中学に入学。その後も成長は右肩上がりで、国内外の大会で勝ち続けた。

 中学卒業後はJOCエリートアカデミー所属(帝京高校に入学)となり、世界カデット選手権2連覇、ユースオリンピック、クリッパン女子国際など名だたる世界大会で優勝する。そして昨年4月、慶應義塾大学の環境情報学部に進学した。

 そのような輝かしい経歴を持つことで、尾﨑は「文武両道」と語られることが多い。だが、本人には学業とレスリングを両立させるという気負いはなく、あくまで自然体。学生生活を謳歌しながら、自分の人生をきちんと見つめている。

「一番好きなのはレスリング。自分にとってとても大事で、それは小さい時から少しも変わっていません。だけど、勉強もけっこう好きなんです。

 いつまでレスリングをやるか、今はまったく考えていないし、わかりませんが、レスリングを辞めたあとのほうが人生は長いじゃないですか。将来、自分は何をやりたいのか、何ができるのか......大学4年間でいろいろ学び、しっかり考えて、卒業する時には自信を持って決めたいと思っています。

 大学の授業はレベルが高いし、ただ聞いているだけじゃなくて課題も多く出されるので、それをこなすだけでもかなりきついです(笑)。でも、どちらもあきらめたくないし、上を目指したい。私ってどんなに大変でも、マイナス思考にはならないんです」

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