京口紘人が井上尚弥に続いて世界のトップへ。カネロvsゴロフキンのアンダーカード実現で「統一戦プラン」が動き出す

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 そんな状況でも冷静さを保った京口に、チャンピオンらしい精神力とたくましさを感じたファンも多いはずだ。経験、技術、アッパーを軸にしたパンチの多彩さを武器に、最後まで相手に主導権を渡さなかった。

 7ラウンド終了間際、連打で奪ったダウンは減点と共に取り消されたものの、ここでベルムデスに深いダメージを与えると、「8回はチャンスと思ってすぐラッシュかけた」。観客席のメキシカンたちをも驚嘆させるほどの怒涛の連打、連打。ベルムデスは半ば戦意を喪失し、ついにレフェリーも試合をストップせざるを得なかった。

「ご覧の通り、タフな試合になってしまいました。ベルムデスもメキシコの地で声援を背に頑張る選手で、気持ちが強かった。下馬評は圧倒的有利だったのに、競った内容になったのは反省点です。最後、ストップ(KO)できたのはよかったなと思いますけどね」

 戦いを終え、京口はしきりに反省したが、実際は実力が上であることを印象づける明白な勝利に見えた。ファンをエキサイトさせる打撃戦で、敵地のさまざまな不利に見舞われながらKO勝利を飾ったことには大きな意味があったように思える。

 ここに辿り着くまで、リング外でも京口には試練があった。昨年3月、テキサスのリングで米国デビューを飾って以降、右手親指、左膝靭帯、左肘と度重なるケガを経験。デビュー以来無敗の快進撃を続けていた京口は、結果として約1年3カ月も試合から遠ざかった。

 ベルムデス戦後、苦しかった日々を思い返し、京口は控室で「周囲の皆さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった」と目を潤ませた。思い通りにならない時間を過ごす中で、あらためて感じることも多かったのだろう。

「今回、この6月10日のメキシコの地まで、周囲の人たちが全力でサポートしてくれたのはすごく力になった。自分の力以上に、周りのサポートの力が本当に一番。1対1の競技ですけど、チーム力というのが大きい。すごく感謝したいです」

 何度も感謝の言葉を述べていた28歳の王者。普段はヤンチャなイメージもあるが、リング外の試練を乗り越えることで精神的に成長した部分もあったのかもしれない。

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