ケンコバが蝶野正洋に「ヒールの本性」を感じた不穏試合。武藤敬司と組んだIWGPタッグ戦で掟破りのパンチ攻撃 (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • 山内猛●撮影 photo by Yamauchi Takeshi

――どんな行動だったんですか?

「確かボディスラムだったと思うんですけど、ブルームがちょっと危ない投げ技を仕掛けた時に、蝶野さんが体をギリギリまで反ったんです。のけぞるような態勢になったから、テレビで見ていた俺は『危ない!危ない!』と叫びました。それで案の定、受け身を取るのが遅れ、危険な形でマットに叩きつけられたんですよ。

 結果として見栄えのいい受けになったんですが、めっちゃ痛かったみたいで。俺からすれば、『蝶野さんがあんな態勢になったからや』という感じだったんですが......そこで蝶野さんの顔色が変わって、無言でスクッと立ち上がり、ブルームのアゴをパンチで思いっきり打ち抜いて倒したんです。

 痛かったのをブルームのせいにして、『お前が悪い』と殴った感じに俺には見えましたが......これはあくまで個人的な推測で、選手間ではいろんな事情があったんでしょうけどね」

――プロレスではパンチは反則ですから、ルール無視ですね。

「しかも蝶野さんはパンチをお見舞いしたあと、武藤さんにタッチしてそこから約10分間も出番なし。武藤さんがひとりで試合を作って、最後はムーンサルトプレスを繰り出して勝ちます。

 それでも蝶野さんは腹の虫がおさまらなかったのか、レフェリーの勝ち名乗りもそこそこに、『俺はキレてるぞ!』という不機嫌な空気を出しながらサーッと控室に帰っちゃうんです。それまでの蝶野さんからは想像できない、おかしな終わり方でした。まさに不穏試合。ただ、俺はその"キレた"蝶野正洋がものすごく魅力的に見えたんですよね」

――そのあと、ヒールに転向してブレイクする片鱗が見えたと?

「まさにそうです。これも俺の勝手な解釈ですけど、あそこで"ブラック蝶野正洋"が目覚めたんちゃうかと思ってます。

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