「オンナ堀口恭司」渡辺華奈は前を向く。「一度アスリートとして終わった。そこからの格闘技人生はボーナスステージ」 (2ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
  • 撮影●田中亘 photo by Tanaka Wataru

【いつかアメリカで、両親の前で試合を】

――強くなりたいという純粋な気持ちは、大好きな漫画だという『DRAGON BALL』(集英社)の孫悟空のようですね。

「私もスーパーサイヤ人のようになりたいですね(笑)。格闘技はできないことが次から次へと出てきて、『何年やっても、すべてができるようにならないだろう』と思えるくらい。私もできないことが多いので、それに挑戦して強くなっていくことが面白いです」

――アマチュア競技からプロへ。"魅せる"ことへの意識は?

「最初は言動もけっこう意識していたんですけど、今はそこまで深くは考えてません。"素"です」

――ご両親は、顔を殴る、殴られることに反対しなかったんですか?

「今でも、心の奥底では(総合格闘技を)やってほしくないと思っているかもしれません。でも、私がやりたいことだから応援する、という感じです。昨年6月の試合も、当初はアメリカまで来るつもりでチケットを買っていたそうですが、最後の最後でダメになってしまいました。いつかアメリカでの試合も見てもらいたいですね」

――その昨年6月の試合は、Bellator同級2位のリズ・カモーシェ相手に初黒星を喫した試合でしたね。

「総合格闘技に転向してからの私を見てくれている人たちは、あまり負けるイメージがないと思います。でも、柔道時代はさんざん負けてきて、親もそれを見てきましたから、もう慣れていますよ」

 渡辺は帰国後、母親に「ごめんね」と謝った。すると母親は「華奈が負けるのは慣れてるから大丈夫よ。まだ頑張ろう」と娘を励まし、こぼれる涙をぬぐった。柔道で何度も苦渋をなめた娘が、一度負けたくらいで格闘技をやめるはずがない。そう理解している母親の言葉どおり、娘はまだ頑張っている。

――格闘家として見てほしい部分は?

「計量での体の完成度や、柔道着での入場も見てほしいです。私はスパっとKO勝ちする"華がある"ファイトスタイルではない。でも、絶対に諦めないので、そういう姿勢を見てほしいなと思います」

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