朝倉海にリベンジした扇久保博正、カズの息子も。大晦日のRIZINは「逆境」「諦めない」男たちが輝きを放った

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

【48歳、元刑事の叫び】

 YA-MANは、複雑な家庭環境に育った。父親は違法薬物で服役し、中学、高校はストリートファイトに明け暮れた。大学でキックボクシングに出会い、RISEでは2021年5月、試験的に導入されたオープンフィンガーグローブマッチで格上の選手を立て続けに撃破した。

 瞬く間にRIZIN出場を掴み取り、勝利したYA-MAN。試合後のマイクでは「僕が伝えたいことはひとつ。どんな環境からも成り上がれる。今『キツい』と思っている人たちは、自分でしか自分の道を切り開けないと思うので頑張ってください。僕は切り開きました!」と叫んだ。

 格闘技を諦めきれず、人生を変えた者もいる。48歳の関根"シュレック"秀樹は、「元静岡県警の刑事」という異色の経歴で、プロ格闘家に転向したのは43歳。かねてからの夢だった大晦日の花道を、UWFのテーマで歩いた。

 対戦相手は、RIZINで3連勝中、ヘビー級では日本トップクラスのシビサイ頌真。下馬評どおり、関根は打撃をもらい続ける苦しい試合展開となった。スタミナがきれ、息も絶え絶え。それでも、気合の雄叫びを上げながら目いっぱいパンチを振った。

 関根の粘りもあって、2ラウンドにシビサイのスタミナがきれ始め、テイクダウンに成功。サイドポジションから鉄槌を落とし続けて、レフェリーストップによるTKO勝利を収めた。試合後のリングで「俺みたいな、アラフィフのオヤジでも、諦めなきゃ、根性があれば勝てるんだよ。病気があってもね、困難があっても、YA-MANくんもさっき言ってたけど、諦めずに生きていればいいことあるから。なにか悩みがあったら、俺に言ってきてや!」と、笑顔で語った。

 過去を清算するため、自らの存在証明のため、人生を変えるため......。さまざまな思い胸に、強者たちはリングに上がる。半年後には、武尊×那須川天心の"THE MATCH"も控える日本の格闘技界にとって、大きな変革を迎える2022年が幕を開けた。

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