井上尚弥の破壊力は「単純に強いだけではない」。元アジア太平洋王者のいとこが体感した「体にダメージが残る」パンチ (3ページ目)

  • Text by Sportiva

【ミットを受けると翌日は体が痛い】

――井上選手のリードジャブは、過去の試合に比べて進化しているように感じましたか?

「振り返れば、今回はリードジャブ、左のパンチの割合が多かったようにも感じます。元から精度は高かったですが、ノニト・ドネア選手クラスになると対応してきますから、意識して向上させようとしているのかもしれませんね」

――8ラウンドに一度ダウンを奪ったあとは、相手の右フックを左拳で軽くはじくようにして、カウンターの左フックをヒット。そこでレフリーが試合を止めました。

「ディパエン選手がダウン後も防御に徹していたら、ストップまでいかなかった可能性もあったと思います。でも、尚弥が仕留めにきて反射的に自分から手を出してしまった。そこで『待ってました』と言わんばかりの左のカウンター。相手の右の攻撃を防いだ左でのカウンターは得意ですから。

 それでも相手は立っていましたが、あそこで止めたレフリーの判断はすばらしかったです。そこまででも打たれすぎていて危険でしたからね」

――浩樹さんは、井上選手のミット打ちの練習でミットを持つこともあるそうですね。その時の衝撃はどんな感じなのでしょうか。

「尚弥の練習でミットを受けると、だんだん握力がなくなっていって、翌日には背中や腕がかなり痛くなくなります。単純に"威力が強い"わけではないんです。僕は大学時代からミドル級など重い階級の選手のパンチを受けたこともありますが、その時のほうがミットが吹っ飛ばされることは多かった。でも、尚弥のパンチを受けた時のような、体にダメージが残ることはありませんでした。

 力の伝え方が他の選手とは違う......というか変ですね(笑)。足から大地の力をもらっているような感じです。下半身、土台の強さが基本になっているとは思いますが、どうしたら力を最大限に伝えられるか、ボクシングを始めた当初から感覚でわかっていたんでしょう。それが徐々に洗練されていったんだと思います」

――世界的に、井上選手は爆発的なパワーがある選手と認識されていると思いますが......。

「思いきりパンチを打つなら、同じ階級でも尚弥より強い選手がいると思います。ただ、モーションが少ないパンチになると、例えば他の選手が50の衝撃を与えるとしたら、尚弥はそれが75になるという感じでしょうか。

 相手からすると、予備動作がなくて対応しにくいのに、強くてダメージが残るパンチがくるからたまりませんよね。しかも尚弥自身は、思いきり打たなくてもいいから疲労が溜まりにくい。打ち疲れで攻撃が止まることもなく、ラウンド後半のスタミナ勝負でも優位に立てます」

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