井上尚弥が挑戦者を「あっという間に仕留める」。米リングマガジン編集長が語る防衛戦と、PFP1位の可能性 (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Hiroaki Finito Yamaguchi/AFLO

【望むのはドネアとの再戦や強敵との試合】

 井上のようにリング・ジェネラルシップ、ボクシングIQ、テクニック、身体能力をすべて兼備した選手は希少です。そして、今の彼はキャリアの全盛期にいると私は考えています。一般的に、軽量級の選手は重量級ほど息が長くなく、20代でピークが終わることが多い。だから井上には、今のうちにできる限り多くリングに立ってほしいし、私たちもその戦いを見逃してはならないのです。

 私は井上を極めて高く買っているので、先ほども話した通りどんな試合でも楽しみですが、やはり『リングマガジン』の階級ランキングでランクインしているような選手と戦ってほしいとは思っています。

 今後については、2022年は1年に3戦をこなす以前のようなスケジュールに戻ってほしいですね。できればジョンリエル・カシメロ(フィリピン)との統一戦か、カシメロがバンタム級を離れることになるのであれば、ノニト・ドネア(フィリピン)とのリマッチをぜひとも実現させてほしいです。

 ドネアとの第1戦は、今思い返しても本当にすばらしい戦いでした。単なるファイト・オブ・ジ・イヤー(年間最高試合)ではなく、バンタム級の歴史に刻まれ、語り継がれるような激闘だったと思います。

 あの試合は敗者の評価も高めてしまう珍しい試合になりました。ドネアは殿堂入りも確実の偉大な選手であり、そんなベテランの名声が敗戦後に高まったのは特筆すべきことです。ドネアが井上を追い詰めた名勝負の再現を見たくないファンはいないはず。もちろん私も大歓迎です。

 井上は『リングマガジン』のパウンド・フォー・パウンド・ランキングでも、トップに手が届く位置にいます。現在、スーパーミドル級を統一したばかりのサウル・"カネロ"・アルバレス(メキシコ)が1位。井上は一時2位につけていましたが、世界ヘビー級タイトルを勝ち取ったオレクサンデル・ウシク (ウクライナ)が2位、ショーン・ポーター(アメリカ)にKO勝ちしたテレンス・クロフォード(アメリカ)が3位に浮上したため、現在は4位です。

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