赤井沙希への偏見とバッシングの嵐。それでも男子プロレスラーと闘い続ける理由

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

【美しくありたいと思う理由】

 2019年11月、「赤井沙希"おきばりやす"七番勝負」がスタート。藤本つかさから始まり、翌年7月の最終戦でついに"女子プロレス界の横綱"里村明衣子とカードが組まれた。

「痺れましたね。里村さんって、身長は小さい(157cm)ほうだと思うんですけど、オーラでめっちゃ大きく感じるんですよ。その里村さんに試合でボコボコにされながら、頭のどこかで『私は間違っていなかった』と思いました。強い女性は美しいとずっと思っていたんです。里村さんの、強さの中にある凛とした美しさには憧れますね」

 赤井は子供の頃から、美にこだわりを持っていた。プロレスラーになってから、ますます「美しくありたい」という思いが強くなった。彼女にとって、美しさとはなんだろう。

「DDTで女子は私ひとりなので、そういう目線で注目されることがある。そんな私がだらしなかったら、全体の評価が下がると思うんです。逆に、マッチョなレスラーの横にキレイなお姉ちゃんがいたら、『なに、この団体?』ってなるかなと。だから美しさという点は気をつけています。DDTが人気を上げていく過程で、私が持っているものを全部使ってもらえたらと思っています」

 美しいといえば、「赤井と同一人物か」と思えるほど"似ている"沙希様だ。東京女子プロレスの"醜い"選手たちを粛清し、美を広めるためにフランスからやってきた沙希様。今はコロナ禍でフランスに帰ることができず、ホームシックに陥っている。

「私も沙希様くらい自信が持てたらなと思う。周りにも言われるんですよ。『なんで赤井沙希ちゃんはもっと堂々とできないの?』って。いつも何かに焦っているし、人に対しても『傷ついてないかな?』『迷惑かけてないかな?』と考えちゃいますね」

 キャパシティーが狭いなと、常に感じている。自分の個人的な時間がないとストレスが溜まり、病みがちだという。そういう時、キレイなものを見ると心がスーッとする。自分もファンにとって、そういう存在になりたい。美しさを追求することで、だれかの力になりたいと赤井は考えている。

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