因縁の岩谷麻優との激闘前夜、王者・中野たむが記者に「怖いです・・・」と吐露した理由 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

――「岩谷麻優は私の希望だったけど、いつの間にか呪いになった」というツイートをされていましたね。

「4年前に長期欠場から復帰して、それから3年間、岩谷麻優に育ててもらったので、私のプロレスって岩谷麻優がすべてだったんです。彼女みたいに、相手の技をド派手に受けきって、最後の最後まで諦めないで勝つプロレス。岩谷麻優のプロレスがしたくてずっとやってきた。私のプロレスはたぶん今でも岩谷麻優なんです。それがどうしても消せない。その呪いを消さないと、中野たむのプロレスはこれから先はない」

――明日勝ったら、消えると思いますか?

「勝ったら消えると思っています。勝つことでしか消せない」

――呪いを消すことが、闘う理由?

「岩谷麻優がいなかったら、私は絶対、プロレスやめてたし、好きになっていなかったし、こんなに楽しくプロレスできるようになっていなかった。4年弱くらい前に、『もうプロレスやめる!』ってみんなの前で泣き喚いたことがあったんですよ。その時に岩谷麻優が、普段は後輩に声をかけたりしないのに、泣きながら『やめないで、たむちゃん。あと3カ月だけ一緒に頑張ろ。一緒にベルト巻こ』って言ってくれたんです」

――プロレスをやめようと思ったのはなぜ?

「欠場から復帰したばかりで、試合も全然勝てなくて、自分の体も思うように動かないし、試合勘も全然戻らなくて。そんな時、大江戸隊にめちゃくちゃいじめられて、ひどい仕打ちを受けることにもう耐えられないし、人間不信になって、プロレスが嫌いになりました」

――岩谷選手が励ましてくれた。

「どうしようもない私に、なんでこんなに優しくしてくれるのか全然わかんなかったけど、こんな私に手を差し伸べてくれる麻優さんに恩返しするまでは、絶対、プロレスをやめられない。この人に喜んでもらうために頑張ろうって思いました」

――どうしたら恩返しできると思いますか?

「恩返しって言いましたけど、そういう柔らかい言葉に頼りたくはないんです。リングの上で見る岩谷麻優って本当にすごくて、マジで後光が差してるんですよ。めちゃくちゃカッコよくて、目もキラキラしてて、彼女を目の前にすると、すごく弱い自分が出てきてしまう。岩谷麻優をぶっ壊すという気持ちでいないと、自分の弱さに負けちゃう」

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