シャワー室で「ボク、デストロイヤー」。全日本レフェリーが目撃した「白覆面の魔王」の素顔

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Kimura Moritsuna/AFLO

 和田ら「リング屋さん」を招待したのには理由があった。デストロイヤーは、全日本のシリーズにレギュラー参戦して間もなく、試合前の会場ロビーで自らの覆面の販売を始めた。和田らスタッフがその売店の手伝いをしていたため、そのお礼で自宅に招いたのだ。

「今では、会場で選手のグッズを売るのも普通ですが、それを日本で初めてやったのがデストロイヤーです。それまで全日本の会場ではパンフレットを売るだけで、Tシャツ、帽子、ポスターといった選手のグッズは売っていなかった。そんな時代にデストロイヤーはアメリカから覆面を持ってきて、それにサインを入れて、確か1500円か2000円ぐらいで売り始めたんです。

 馬場さんはデストロイヤーに対しては特別待遇にしてたんで、覆面を売ることを認めていたんですが、最初は『変なことをやるなぁ』という目で見ていましたよ。だけど、それがファンに受けたことを見て、自分も16文キックの足型をイラストにしたTシャツを売り始めた。それから他の選手もグッズを作るようになったんです。だからデストロイヤーは、日本のプロレス界では"グッズ販売の元祖"ですね」

 リング上だけでなく、歌手の和田アキ子がMCを務める日本テレビ系『金曜10時!うわさのチャンネル‼』(1973年10月~1979年6月)にレギュラー出演し、お茶の間の人気も獲得した。

「『うわさのチャンネル』に出てから、さらに人気がすさまじくなってね。毎年夏になると麻布十番で『納涼祭り』があるんですが、そこでデストロイヤーが試合会場と同じようにサイン入りの覆面を売ったら、1日の売り上げが100万円くらいになったのかな。飛ぶように売れたから、デストロイヤーには『ここでこんなに売れるんだから、試合会場ではもっと売れるはずだ』とハッパをかけられましたけど(笑)」

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