プロレスラー伊藤麻希が強くなって失った「生き様」。見せる「必要がなくなった」と言い切れる理由 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

 今年3月7日、フロリダ州ジャクソンビルで行なわれた米プロレス団体「AEW」のPPVイベントにサプライズ出場。アメリカで爆発的な人気を博した。今ではTwitterのフォロワー数が13万人を超える。

「伊藤麻希の面白さって、男色ディーノにリップロックするとか、そういうところでもあるかもしれないけど、世界の人たちが観たい伊藤麻希は、今はそこじゃない気がしてるんです。みんなが観ていて幸せになれるようにやりたいんですよね。下手くそとか、そういうことはもういいんですよ。誰も傷つかないプロレスがしたいって思ってます」

 今年4月17日、プリンセス・オブ・プリンセス王座の王者・辰巳リカと、タイトルマッチを行なった。辰巳はマイクでこんなことを言った。「伊藤麻希は丸くなったから、もっと尖ってこい」――。

「確かに、自分は前ほど尖っていないと思ってたんですけど、辰巳リカに言われたことで『なんで尖らなくなったんだろう?』ってあらためて考えたんです。そしたらやっぱり、尖る必要がなくなったからだと思いました。尖らなくても、自分にはいいものがたくさんある」

 自信過剰だと思われるかもしれない。しかし、その自信をつけるための努力をしてきた。「今の自分が好きなんですよね」と照れ臭そうに笑う。

 時代が変わったなと感じている。リップロックをした時、心のどこかで「テレビに出たい」「出るためには他の人がやらないこと――"女を捨てる"みたいなことをしなければ」と思っていた。でも今は、そんな時代じゃない。

 2019年5月3日、東京女子プロレス後楽園ホール大会にて、伊藤はアジャコングと対戦。試合後のマイクで、80万円かけて小顔整形をしたこと、それを誰にも気づいてもらえなかったことを告白した。

「試合で結果を残せなかったから、マイクに頼ってしまった。でも今は、マイクはあまりやらないようにしてるんです。ここから先は、どれだけ減らしていけるかですね」

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