女子ボクシングの入江聖奈が日本女子初の金メダル。すぐさま引退表明「カエル関係で就職したいけど...」 (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • photo by JMPA

「この1年間は本当にボクシングに捧げてきたので、なんか終わったという実感がまだわかないんです」。その努力が実っての金メダル。「光栄なことに私が(日本の女子ボクシング史上で)一番に金メダルを獲れたんですけど、私は逆上がりができないくらい運動オンチなので。そんな運動が苦手な子でも、努力を続けて(目標を)諦めなかったら何かつかむことができるよって教えてあげられたのかなと思います」

 鳥取県米子市出身。小学校2年生の時、ボクシング漫画『がんばれ元気』の影響を受けて地元のジムでボクシングを始め、2013年に全日本幼年アマチュアボクシング大会で優勝した。2017年には全日本女子ボクシング選手権を制し、2019年に日本体育大学に進学。2020年3月のアジア・オセアニア予選で東京五輪出場を決めた。

 座右の銘が『能ある鷹は爪を隠す』。趣味はカエル鑑賞という。練習がオフの日は近くの公園の池にカエルやオタマジャクシを探しにいく。オタマジャクシを見ると、「懸命に泳ぐ姿に励まされるんです」と説明する。

 次の目標は「世界選手権の金メダル」である。

 ただいま、大学3年生。ボクシングは「有終の美で終わりたいから」と大学いっぱいで引退表明。「ちょっと4年生からは就活もしないといけないので頑張ります。カエル関係で就職できたらいいんですけど、ネットで調べたら見つからなかったので、ゲームが好きなのでゲーム会社に就職したいと思います。以上で〜す」

 笑いが絶えない記者会見だった。優勝のご褒美をもらえるとしたら、と聞かれると、「とりあえず焼肉を食べたいので、両親にメチャクチャいい焼肉を食べに連れていってもらいます。タン一択で。以上で〜す」

 女子ボクシングの競技人口はまだ少ない。かつては女子ボクシングの普及を目標に掲げていたが、「私が金メダルを獲ったことで、メディアの方々にも取り上げていただけるチャンスが増えたと思うので、そこを入り口にして女子ボクシングが盛り上がっていったらいいと思います。以上で〜す」と言った。

 女子ボクシングの歴史の扉は? と聞かれると、入江は破顔一笑。

「ちょっと全開にしちゃったかなと思います。以上で〜す」

 天真爛漫。ひょうきんというか、天然キャラというか。しかも礼儀正しい。歴史を創ったファイターはどこまでも明るかった。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る